古着の仕入れを最適化する戦略|国内外ルートと実務者に必須の中長期的な視点
国内外の市場環境が変化する中、古着ビジネスにおいて「仕入れ」は今まで以上に戦略的な判断が求められるフェーズに入っています。
フリマアプリによる供給の不安定化、海外輸送コストの上昇、代行業者との連携強化など、仕入れルートの再構築を迫られる実務者も少なくありません。
本記事では、2025年〜2026年の古着仕入れ市場の動向を踏まえた上で、国内外それぞれの実態と仕入れ最適化のポイントを整理します。
最終的には「仕入れ=作業」ではなく、収益性と持続性を見据えた中長期的運用戦略として設計すべきであるという結論へ導くことができるでしょう。
目次
古着の仕入れ市場|2025〜26年の現状と予測から考える

古着を仕入れる市場は、2025年〜2026年にかけて大きな転換点を迎えています。このセクションでは、市場全体の動向と予測を起点に、仕入れ戦略の土台となる現状認識を整理していきます。
市場動向を踏まえた仕入れの目的と収益構造
2025年時点での国内古着市場は、フリマアプリを介した個人売買が成熟しつつも供給の質が二極化しています。
安価な在庫確保はしやすい一方で、収益性の高い商品を安定的に確保する難しさがあるでしょう。
そのため、実務者にとっては「どのようなアイテムを・どの価格帯で・どのチャネルに流すか」を軸に、仕入れ戦略を明確化する必要があります。
販売チャネル別に変わる仕入れ戦略
EC、実店舗、ポップアップ、ライブコマースなど、販売チャネルごとに求められる商品特性や回転スピードが異なるため、仕入れ段階から販売設計を視野に入れることが重要です。
たとえば、ECではサイズ感・ブランド力が重視され、実店舗では状態や試着可能性が重視されるなど、仕入れる商品の選定基準も変化します。
実務者が押さえておきたい古着流通の知識
市場構造として、国内の古着流通は「再流通品」と「業務用在庫」の2本柱で成り立っています。さらに、選別業者や選別拠点(例:関東圏の業者倉庫)を介したグレーディングの存在も、仕入れ価格や品質に大きく関与しています。
これらの構造を理解することで、現場の混乱を避け、精度の高い仕入れ判断が可能になるでしょう。
【国内市場】古着の仕入れにおける各仕入れルートの精度と選定基準

国内における古着の仕入れルートは、ここ数年で選択肢が広がり、同時に選定の難易度も上がっています。本章では、主な古着を仕入れるルートの実態と選定時に注視すべきポイントを詳しく解説します。
業者卸・業務提携・倉庫直取引の実態
国内業者との定期取引は、一定の量と品質を確保できるという面で依然として強力なルートです。特に倉庫直取引では、商品選別の自由度が高く、リピーターとの関係性が強い業者ほど優先的に高ランク品を仕入れることができます。
一方で、新規参入者にはロット契約のハードルが高く、価格交渉力も限定的である点に注意が必要です。
フリマアプリ・個人仕入れの戦略的運用
メルカリやヤフオクなど、個人出品の市場も引き続き活発ですが、品質のばらつきと再現性の低さが大きな課題です。
戦略的に活用するには、特定ブランドの動向や出品者との関係構築、ツールによるモニタリングなどを組み合わせた運用が求められるでしょう。
国内仕入れの利益率と回転率の最適化
国内仕入れの最大の利点は、配送リードタイムの短さと検品精度の高さにあります。その反面、仕入れ価格が高騰しやすいため「利益率を取るか、回転率を取るか」のトレードオフ構造が顕在化します。
季節・トレンド・在庫回転スピードのバランスを見極めながら、仕入れ方針を柔軟に調整することが必要です。
【国外市場】海外から古着を仕入れる実務と成功のポイントとは?

海外からの古着の仕入れは、希少性や高付加価値のアイテムを手に入れるうえで有効な手段ですが、それと同時に物流コスト、品質管理、言語の壁など複数のリスクも伴います。ここでは、実務的な観点から整理していきましょう。
US・EU圏との取引の流れと現地事情
主な仕入れ先としてはアメリカ(US古着)とヨーロッパ圏(フランス、ドイツ、イタリア等)が中心です。現地選別工場やマーケットでの買付は、直輸入に比べ高品質を確保しやすい反面、現地とのコミュニケーションコストや為替リスクも発生します。
最近ではタイや韓国経由で仕入れるケースも増えており、物流網の再編成が進行中です。
弊社(NIPPON47)は、タイに倉庫を持っており、仕入れの代行を行っています。中身の検品や品質管理などにも対応しているため、タイからの仕入れをお考えの方はぜひご相談ください。
参考文献:古着店(2025年版)
代行業者の役割と使いどころ
現地との直接交渉が難しい事業者にとって、仕入れ代行業者の存在は非常に有効です。言語・物流・選別・検品といったプロセスを代行することで、時間とコストを抑えつつ一定の品質を確保できます。
ただし、手数料体系やロット制限、返品対応など契約条件の精査が重要です。
輸入時の関税・送料・品質リスクへの対応
海外仕入れでは、輸送コスト・為替変動・関税など商品原価に直結する要素が多く、現地価格と国内販売価格の差益構造が常に変動します。
また、ダメージや汚れなど品質リスクへの対応も不可欠なため、受け入れ検品体制の整備や補修スキームの導入が安定運営のカギとなるでしょう。
古着を仕入れる収益性とリスク管理|中長期視点で考える運用戦略

古着の仕入れを安定した事業として成立させるには、その後の販売戦略・在庫管理・キャッシュフロー改善までを見据えた中長期的な設計が欠かせません。このパートでは、持続可能な仕入れ体制を構築するための考え方と具体的なポイントを解説します。
在庫回転率とキャッシュフローを意識
高回転型の仕入れ戦略では、キャッシュフローの改善やスペース効率の最大化が図れます。反対に、低回転・高利益を狙う場合は、保管コストや在庫陳腐化リスクに対応する運用体制が求められます。
いずれの方針も、月次で在庫回転率をチェックして次回仕入れに反映するような仕組み化が必要でしょう。
仕入れ商品の選定基準とデータ分析
属人的な勘に頼らず、販売実績やトレンドワード分析、売れ筋傾向の可視化をもとにした商品選定が重要です。SKU単位での粗利率管理やリードタイムごとの回転スピード分析により、仕入れ判断の精度が格段に上がります。
仕入れ後の設計とは
仕入れはゴールではなく、あくまで販売プロセスのスタート地点です。商品登録、撮影、値付け、販売チャネル配分、プロモーション、売上予測まで含めた仕入れ後の設計がなければ、事業として成立しません。
全体設計ができてこそ、仕入れ戦略が収益戦略へと進化します。
まとめ|古着の仕入れを事業成立させるために押さえるべき実務本質
古着の仕入れは、従来のような単純構造から、より複雑で戦略的な業務領域へと移行しています。また、取り巻く環境は日々変化しているため、その場しのぎの施策では限界を迎えるかもしれません。
実務者として必要なのは、目先の仕入れ単価や在庫数だけではなく、回転率・利益率・運用設計・チーム体制を含めた中長期的な視点です。
まずは、自社の現状を棚卸しして、どのチャネルで何が売れているのか、利益率が高いカテゴリはどこか、在庫回転にロスがないかを洗い出すことから始めましょう。
そして「仕入れ=作業」ではなく、事業の基盤を築くための重要な経営判断の一部として再定義していくことが、変化の激しい古着市場で持続的に成果を上げる第一歩です。
代表取締役 末継 佳大
監修者
株式会社NIPPON47
前職はプロカメラマンとして10年ほど勤務。その後、カメラマンとして独立。タイへの出張時に現タイ法人の代表である日本人と知り合い2019年に同社を創業。当時はタイSAGAWAの代理店として様々な荷物を扱うが、コロナ禍に古着の輸送に特化したサービスを展開し今に至る。現在は、タイ・パキスタン・ドバイの各法人/オフィスと連携を取り合い、日本に拠点をおきながら古着仕入れ・輸出入のサポートを行う。
