海上輸送で重要なカット日とは?輸出で準備すべき書類や注意点を解説
カット日は、輸送準備を完了させるための最終的な期限です。締め切り期限を過ぎると輸送に遅れが生じ、取引先との信頼関係やコストなど多方面に影響を与えかねません。
今回は、海上輸送で最も重要なカット日の基礎知識と実際の手続きの手順・注意点を解説します。海上輸送が初めての場合でも、必要な手続きを理解すると、余裕をもった作業スケジュールが立てられます。
取引を安心して続けられるよう、基礎知識をおさえておきましょう。
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海上輸送のカット日はいつ?貨物と書類で異なる締切に注意
海上輸送では、締め切り日を意味する「カット日」が存在します。締切日を過ぎると、ビジネス全体に大きなリスクを与える可能性も。まずは海上輸送におけるカット日の基礎知識を解説します。
カット日とは|必ず守るべき理由
カット日とは、貨物の搬入を終えるべき日を意味します。通常、出港日の前営業日あるいは2営業日前に設定されています。
締切日を逃すと、予定の船への貨物の積み込みや輸送ができなくなります。「貨物」と「輸送に関する必要書類」それぞれに締切日が決められており、締切は別日になるケースもあるため、注意が必要です。
貨物のカット日
貨物のカット日は、以下の2種類が存在します。輸出する貨物によって、カット日が異なるため、注意が必要です。
・コンテナヤードカット(CY CUT)
…フルコンテナの場合の締切で、出港日の前営業日が一般的です。
・コンテナフレイトステーションカット(CFS CUT)
…混載貨物の締切で、通常は出港の2営業日前です。
書類のカット日
書類の締切日(ドキュメントカット:DOC CUT)は、貨物の受取証であるドックレシート(DR)や危険品明細、船荷証券(BL)の作成に必要な書類などの提出期限です。
貨物の搬入を済ませていても、書類が締切日に間に合わないと輸送できません。貨物よりも早めに締め切られる場合が多いため、早めの準備が必要です。
【海上輸送での輸出準備】カット日までに必要な3つの手続き
海上輸送では、カット日までに各種手続きを必ず済ませておく必要があります。輸出準備には多くの工程が含まれ、少し複雑に感じるかもしれませんが、大きく3つのステップに分けて考えると、効率的に作業を進めやすくなるでしょう。ここでは3つの手続きについて、具体的に解説します。
貨物と書類の準備
輸出に必要な準備は、大きく「貨物」と「書類」の準備にわけられます。それぞれの締切日に間に合うように、計画的な準備が必要です。
【貨物の準備】
・貨物の品名・個数・ラベルなどが正しく貼られているか確認する。
・貨物をコンテナに詰める。
【書類の準備】
・インボイス(INVOICE)
…送り状のこと。商品価格等を記載する。
・パッキングリスト(PACKING LIST)
…貨物の明細書。個数や重さ等を記載する。
・シッピングインストラクション(SHIPPING INSTRUCTION、S/I)
…船に貨物を積むための指示書。船荷証券(BL)作成の指示書となる。
・その他、危険物を輸送する際はSDS(安全データシート)などの書類が必要
税関での輸出申告・許可取得
税関申告は、貨物および関連書類が揃った後に行います。税関で両方が確認されると、輸出の許可がおりるのです。
税関での許可取得後は、価格・個数の変更や貨物の取り扱いが難しくなります。不備がないように、申告前に書類と貨物の確認をしっかり行いましょう。
貨物の搬入と書類提出
船のスケジュールに合わせて、保税地域に貨物を搬入します。税関で輸出許可がおり次第、海貨業者が貨物をコンテナヤードやCFSに搬入してくれます。書類は船会社に提出しましょう。
貨物搬入や書類の提出は、どちらか一方でも遅れると予定の船に積み込めません。次便まで待つことになったり追加費用が発生する場合もあります。必ず締切日までに行いましょう。
参考:税関(Japan Customs)「5001 輸出通関手続の概要(カスタムスアンサー)」
海上輸送でカット日をすぎるとどうなる?注意すべきポイント
海上輸送でカット日を過ぎてしまうと、貨物の輸送が大幅に遅れてしまいます。輸送の遅れは企業の信頼にも大きく関わるため、締切日までの準備完了は必須です。ここでは、輸送遅延があった企業の事例と、「期限に間に合わなかった」というミスを防ぐためのポイントを解説します。
カット日を過ぎると大幅な遅延が発生
貨物と書類のどちらか一方でも締切日に間に合わなければ、貨物を船に積み込めなくなります。その結果、輸送に大幅な遅れが生じてしまいます。
ある企業が海外の企業へ至急の輸出を行った際、港の混雑により大幅に遅延しました。その結果、取引相手の工場の作業が滞り、取引先からは損害の一部負担を求められ、対応に苦慮する事態となりました。
納期遅延は、顧客の生産ラインの停止や販売機会の損失につながります。また貨物の品質劣化や損傷、輸送コストの追加や作業効率の低下など、ビジネス全体のスケジュールに大きな影響を与えるのです。
海外への海上輸送は、不測の事態に備え余裕を持ったスケジュール管理が重要です。
参考:貿易事業サポートセンター株式会社「【輸送遅延】事例に学ぶ失敗しない貿易のコツ④」
24時間ルール適用地域に気をつけよう
24時間ルールは、船に貨物を積み込む24時間前までに、相手国の税関に貨物の情報を提出するというルールです。
このルールにより、通常より早い締切(3〜4日ほど前倒し)が設けられている国があるため注意が必要です。現在はアメリカやEU諸国、中国などで適用されています。国によっても多少ルールが異なります。事前に相手国のルールをしっかり確認しましょう。
2つの締切に要注意
貨物のカット日には「CY CUT」と「CFS CUT」の2種類があり、それぞれ締切日が異なります。
原則としてCY CUTは出港日の前営業日、CFS CUTは2営業日前が締切日です。加えて、アメリカやEUなど24時間ルールの対象地域では、締切日がさらに早まる場合があり、それぞれの締切日の事前確認が不可欠です。
また、貨物と書類の提出締切は基本的に同日の場合が多いですが、書類の方が先に締め切られるケースもよくあります。両方揃っていないと船への積み込みができないため、必ず両方の締切日を正確に把握しましょう。
海上輸送をスムーズに行う!カット日を過ぎないようにする工夫
締切日を過ぎると輸送遅延が発生し、、企業の信頼損失やコスト増加などのリスクが増します。ここからは、海上輸送で必ずカット日に間に合うスケジュール管理の方法をご紹介します。船の予約が完了したら、まず最初に締切日を把握し、余裕をもったスケジュール作成が重要です。
カット日を把握しスケジュール管理を徹底する
まずはカット日を確認し、締切日から逆算したスケジュールを立てましょう。
船の予約を済ませたら、必ず最初に締切日を確認します。確認は、船会社に直接問い合わせるのが最も正確な方法です。
次に貨物や書類の準備にかかる大まかな日数を計算し、作業完了日を割り出します。作業完了日は、締切日の数日前に設定するのがポイントです。万一の遅れや書類の不備などのトラブルに備え、余裕をもったスケジュールを組みましょう。
貨物・書類の準備は余裕を持って行う
貨物や必要書類は、ギリギリではなく余裕をもった準備が重要です。特に書類の不備などがあると、通関に想定外の時間を要する場合もあります。早めに済ませておけば、余裕をもって修正対応等に取りかかれます。
また、自社から出発港までの輸送時間も考慮すべき事項です。天候や機材トラブルなどにより、予定通りのスケジュールで輸送できない可能性も考慮しておく必要があります。貨物搬送は、締切の1〜2営業日前、書類は3〜5営業日前に済ませておくと安心です。
仲介業者に依頼する
船の手配や貨物・必要書類の準備など、海上輸送前に準備すべき項目は非常に多いです。これらの煩雑な手続きや作業は、仲介業者(フォワーダー)へ依頼すると作業の効率化が図れます。
フォワーダーは、輸出入に関するさまざまな手続きをまとめてサポートしてくれます。荷主と船会社の間に立ち、カット日の管理はもちろん、船の手配から書類作成、通関業務、貨物配送の手配など、ほぼすべての手続きを代行してくれるのです。
貨物の種類や仕向地に対応できる、実績と信頼のあるフォワーダーを選択すると、安心して任せられるでしょう。
まとめ|海上輸送においてカット日は必ずチェックしよう!
海上輸送で輸出を行う際、必ず意識するべきなのが「カット日」です。締切日を過ぎてしまうと、貨物の積み込みや輸送は一切許可されません。輸送の遅れは、コストや作業負担の増加、貨物の品質低下のリスクに加え、企業の信頼喪失にもつながります。
海上輸送では、必ずカット日を確認したうえで作業を進めましょう。余裕のあるスケジュールを組むと、不測の事態にも対応しやすくなります。