ファストファッション問題点を深堀!日本人が知るべきアパレル業界に根強く残る課題
日本では、1990年代以降に手頃な価格で手に入るファストファッションが流行り始めました。昨今、物価高や低賃金のため、低価格で衣服を購入できるファストファッションは私たちの強い味方です。
しかし、このファストファッションを含むアパレル業界には、知っておくべき闇の側面があると言われています。環境問題や労働問題、さらにはSHEINなどを始めとするウルトラファッションも関わる問題が最近では注目を集めています。
今回は、ファストファッションの問題点をテーマに、歴史的な側面と現実的な課題の両面から解説していきます。一人一人がアパレル業界の現状を元に、行動できるようになると、持続可能な環境を目指せることでしょう。
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【ファストファッション問題点】低価格の洋服が生活を豊にしてきた背景
現在の日本では、低価格で洋服を手に入れられます。最近では、「ウルトラファッション」と呼ばれる業態までありますが、ファストファッションの問題点はどこにあるのでしょうか?まずは概要と歴史について確認します。
ファストファッションの問題点を知る前に
ファストファッションとは、「早い」「安い」で有名なファストフードをなぞらえた造語です。低価格で流行りのトレンドを取り入れる特徴があります。
<ファストファッションの特徴>
・低価格で購入できる
・素早くトレンドの洋服が手に入る
・化学物質が多いデメリットも
人々の手に届きやすい一方、環境にまつわるデメリットも存在しています。
ファストファッションの歴史
日本では、1990年代のバブル崩壊後、ハイブランドの勢いが無くなったところで流行り始めました。代表的なのは、ユニクロのフリースです。ユニクロのフリースを機に、他国のファストファッションブランドが日本に進出しました。
<ファストファッションの歴史>
1994年:ユニクロが店舗数を拡大
1995年:GAP、GAPkidsストアの日本1号店がOPEN
1998年:ZARAの日本1号店が渋谷にOPEN
バブル崩壊後の景気が悪い中、ファストファッションは瞬く間に人気のブランドとなりました。低価格の洋服は、景気が悪い中でも私たちの生活を豊かにしてくれた背景があります。
参考:ディンプル「ファストファッションとは?歴史や具体的なブランドを詳しく紹介」
ファストファッションを超えるウルトラファッションとは?
現在、ファストファッションを超えるウルトラファッションと呼ばれる業態があります。ウルトラファッションとは、ファストファッションを超える1着1000円程度のブランドです。
<ウルトラファッションの代表>
・SHEIN(中国)
・Boohoo(イギリス)
・Emmiol(香港)
ウルトラファッションは、Z世代の74%が購入経験があると言われるほど人気のブランドです。しかし、ウルトラファッションはファストファッション以上に環境問題や労働問題が指摘されています。
地球温暖化の原因がファストファッションにある
問題点は?
ファストファッションの問題点の1つに、大量生産、大量販売による自然環境の悪化が挙げられます。しかし、何気なく利用していると、アパレルが地球温暖化の原因になるという現実を理解できていない人も少なくないです。問題点を整理し洋服への考え方を変えていきましょう。
大量破棄による環境汚染
ファストファッションの問題点として、衣服の大量破棄が挙げられます。ファストファッションでは、衣服を大量に生産するため、売れ残る量も多く在庫を抱えてしまう背景があります。
<衣服を大量破棄する背景>
・トレンドのサイクルは短いため、売れ残った在庫は破棄される
・在庫を抱え込むと、在庫に税金がかかるため破棄したほうが安くすむ
・売れ残りをセールし続けるのはブランド力が落ちるため破棄する
日本でも年間15億着の衣服が売れ残り、新品のまま破棄されるようです。衣服に使用された化学物質が土地に染み込み、土壌汚染の原因になります。
製作過程で生じる大量の水問題
アパレル業界では、大量の水を使う問題点もあります。例えば、Tシャツ1枚作るだけでも約27リットルの水を必要とし、これはバスタブ15杯分の量に相当します。洋服と水問題の関係性をまとめました。
<洋服と大量の水>
・原料であるコットンの製造に必要
・染色や仕上げの行程でもたくさんの水を使う
・製造過程で発生した汚染水が河川へ流れる
・家庭の洗濯機からも化学物質が下水に流れる
ファストファッションでは大量の服を生産するので、使う水の量も多くなります。他にも、衣服の製造過程や洗濯で化学物質が河川に流れる環境汚染も問題視されているのです。
物流によって起こる大気汚染
ファストファッションでは、大量の衣服を生産して、素早くトレンド商品を店頭に並べます。世界中に服を届けるためには、飛行機や船を使う必要があり、膨大なエネルギーを使用するのです。
飛行機や船を動かす機会が増えれば大気汚染も悪化してしまいます。物流によって大気汚染が進む問題点も覚えておきましょう。
ファストファッション問題点は労働にも…安い服の裏事情とは
ファストファッションの問題点は、環境問題だけではありません。私たちが安く服を購入できる背景には、安い人件費で服を製作している人たちがいるからです。
近年話題のウルトラファッションでは、低価格実現のために、労働者にかなりの負担をかけていることも報告されています。ファストファッションの裏側にある労働問題について解説します。
収入は1ヶ月2万円弱?超低賃金労働
ファストファッションの魅力は低価格で洋服が手に入る事です。この低価格を実現するために、低賃金で労働を強いられている人たちがいます。以前は中国で衣服を生産していましたが、今はバングラディシュが中心となって衣服を製造しています。
しかし、十分な収入はもらえず、1ヶ月で2万円弱という低賃金で働いているのが現状です。
10時間を超える労働時間
元請業者からの無理な要望に答えるために、下請けのバングラディシュの人たちは、10時間を超える労働を強いられています。休憩時間が十分にもらえなかったり、毎日残業があったりと先進国では考えられない労働時間で働いています。
中国のウルトラファッションブランドSHEINでも無理な労働をさせている事が調査で判明しました。
参考:WWDJapan「話題の「シーイン」、労働環境の実態は? スイスの人権団体が「違法」と報告」
アパレル業界では、人権を無視した無理な労働を強いられている現実があるようです。
体調を崩すほどの劣悪な労働環境
有害な化学物質が多く含まれた革製品や衣服を製造する時は、製造スタッフの身体にも大きな負担がかかります。有毒ガスを吸い続けて働いてる人は、寿命が50年になるとも言われています。
他にも、空調が効かない蒸し暑い部屋で何時間も働き続けている人もいるなど、劣悪な労働環境も問題です。
今日からできる!ファストファッション問題点を解決する考え方
最後に、今日から意識できる洋服との付き合い方や考え方について解説します。環境問題や、労働問題を他人事だと思わず洋服に対する考え方を見直しましょう。
流行に流されない考え方
服を選ぶ時に、値段やデザインなどを見ると思いますが、トレンドの服を選ぶ人も多いと思います。流行りで洋服を選ぶと、流行りが去ったら破棄するという流れに陥ってしまうのです。
トレンドに沿ってファストファッションを着まわすのは、環境に優しい選択ではありません。自分らしさを追求し、本当に欲しい洋服を購入しましょう。
良い素材の服を長く使う
ファストファッションは低価格で購入できる半面、長持ちしない特徴があります。スピード感と低価格を重視するあまり、耐久性が弱いのです。他にも、低価格の服だと「安く買ったから」という理由で、扱いや洗濯の方法も雑になるため、長く着ることができません。
洋服を買うときは、化学製品を使用してない洋服を選び、丁寧な手入れで長く着ることが理想的です。
国内でリユースして破棄しない
「環境に配慮したいけど、物価高で財布に余裕がないからファストファッションしか買えない…」このような意見を持つ人も多いと思います。確かに、物価高に悲鳴を上げている人が多い日本では、衣服にお金をかけることができません。
ファストファッションを購入しても、洋服を大事にする意識を持つだけで環境に対する影響は変わります。
<ファストファッションの扱い方>
・洗濯ネットを使用するなど、長く使える工夫をする
・着なくなったら譲渡したりフリマアプリで販売する
・着なくなったら掃除用具にリメイクして破棄する
環境に配慮して、着なくなった洋服は捨てるのではなく、リユースする選択をとるようにしましょう。
まとめ
ファストファッションの裏側には、たくさんの問題点が存在します。アパレル業界全体で、環境問題や労働問題が指摘されています。消費者である私たちが意識するべきことは、誰かの犠牲のもとで低価格の商品が成り立っているという事実です。
事実を知ると、洋服との付き合い方が変わると思います。洋服を選ぶ時は、流行に流されず、自分の価値観にあう商品選びが大事です。洋服との付き合い方を見つめなおし、環境に配慮した選択ができるように意識しましょう。