服の廃棄を最小化するには?最短フローとコストを抑えた運営・管理ガイド
昨今のサスティナブルの流れはファッション業界にも浸透してきており、服の大量生産と廃棄の現状が見直され始めています。
服の廃棄を減らすには今まで廃棄に回していた服をいかに再販売やリユース、リサイクルへと転換できるかが重要です。そのために、廃棄と回収の判断軸を整えていきましょう。
本記事では、国内外の制度動向を踏まえつつ、廃棄フローの見直しと考え方を整理します。一般的な改善策ではなく、個々の現状にあった廃棄削減案が作れるようになることで、無駄のない運営を目指しましょう。
目次
服の廃棄における現状と今後の国際的な廃棄制度の見通し

ファストファッションによる服の過剰供給と廃棄が問題視されています。
近年では欧州を中心に、製造から回収に至るまでサスティナブルの意識が浸透し始めるようになりました。
制度の動向を把握し、企画段階から廃棄の現状を見直しましょう。
日本での大量廃棄の現状
日本では、新作投入の頻度が上がり返品も増えた結果、販売後に動かない在庫が残りやすくなっています。
2024年時点では、年間82万トンもの服が供給され、約7割にあたる56万トンが事業所や家庭から未利用のまま廃棄されているのが現状です。
廃棄の原因はファストファッションの流れも一つありますが、特にブランド企業においては、シーズンオフになった服もブランド保持のために大規模なセールやリユースが実施できない状況もあります。
参考:環境省「2024年版衣類のマテリアルフロー」
制度の動向と企業への影響
欧州では繊維分野の拡大生産者責任(EPR)が進み、回収やリサイクルに生じる費用負担が義務づけられたことで、設計段階から「捨てない」発想が求められています。
国内でも資源循環の強化が議論され、分別・回収・トレーサビリティの整備が重要視されています。家庭から廃棄される衣類を、2030年度までに2020年度比で25%削減する目標が示されました。
企業においても、在庫量や処分方法などの情報開示といった、欧州の流れを踏まえたルール作りが進められており、製造段階からサスティナブルな取り組みを求められているのが現状です。
参考:日本貿易振興機構「EU、繊維製品の製造事業者に拡大生産者責任を課す廃棄物枠組み指令改正案に合意」
制度対策の基本
サスティナブルな流れに合わせるには、廃棄の現状を見直すことから始めましょう。
販売、返品、在庫など、どこで商品の滞留が起きているか確認します。カテゴリーやサイズ、シーズンごとに比較すると判断しやすいです。
次に、なぜ廃棄が増えるかを深掘りします。販促計画に無理はないか、返品条件は守られているのか、縫製の不備や検品に漏れはないかなど、あらゆる方向から廃棄の原因を探りましょう。
その上で、制度や法令に合わせた改善策を練ることで、無理なく製造から販売までのフローを見直せます。
服の状態と廃棄量で判断する最短フローと回収ルートの選び方

衛生面や破れなどにより、服の品質が保てない場合は廃棄を検討します。回収ルートは廃棄量による使い分けがおすすめです。
廃棄かリユースか判断に迷った際の考え方を知り、コストと無駄な廃棄を減らしましょう。
廃棄すべきかリユースか
服の廃棄かリユースかの判断は衛生面を主軸に検討しましょう。皮脂の強い付着やカビ、金具の破損など、着用者にリスクがあれば廃棄を優先します。
次に、手直しの量と販売見込みを照らし合わせましょう。破れやほつれ、縮みなど手直しの度合いと、季節やサイズ、デザインが現在の販路に合うかを両軸に、リユース可否を判断すると意思決定がぶれません。
廃棄量に応じたルート選び
廃棄が決定した服は、量に応じて廃棄先を決定するとコストを抑えられます。
・廃棄量が少量の場合
自治体の資源回収や宅配回収が扱いやすい
・廃棄量が多い場合
事業者の宅配回収や産業廃棄物の委託を前提に計画
パレット単位まで膨らむ場合は、輸送コストや作業時間、安全性を比較して選びましょう。
リユースできない例と対処法
強いにおいやカビ、油染みが残る服は、商品として回復させるのが難しくリサイクルへの切り替えが現実的です。
金具の破損や鋭利な部位がある場合は、安全のために取り外しや補修を試み、危険が残るときは廃棄します。
また、子ども服で安全表示が欠落している場合は販売やリユースを避け、リサイクルか廃棄へと判断しましょう。
服の廃棄を減らすにはどうするか?再販売とリユースの活用

服を再販売する場合は、期限を決め売り切れるのかを念頭にしましょう。
海外へのリユースは、服の廃棄を減らすという目的を忘れずに、安全に正しくリユースされるか見極めます。
再販売とリユースの判断軸と注意点を元に、リスクを減らした運用をしましょう。
国内での再販売と廃棄の使い分け
再販売するなら、短期間での回転を前提に、値札の付け替えやセット化、アウトレット販売などが有効です。
外部の委託販売を活用する場合も、期間を定めて成果が出なければ素早く撤退します。
あくまで“売れる服”の再販売が前提です。ブランドとして品質を保てているか、売れる見込みがあるかを基準にし、一定レベルに満たない服は廃棄しましょう。
海外へリユースに出す時の基本
海外へのリユースでは、服の最終地点の把握が大切です。「活用されずに結局廃棄されてしまった」という事態がないようにしましょう。
特に、発展途上国へのリユースは、相手国から繊維産業の仕事を奪ったり、不適切な廃棄につながったりする恐れもあります。
回収先の選び方と注意点
回収先は、受け入れ不可の項目や前処理の要件、引き取りの下限数量を元に選びます。新品、中古、リサイクルなど品質や目的に応じた回収先の使い分けも大切です。
引き取り自体が無料でも、輸送や梱包、人件費は発生するため合計コストで比較しましょう。
回収後の写真や重量、仕向け地、方法が記載されたレポートがあるかも信頼性の判断材料になります。
コストを抑えて服を廃棄する!必要経費と在庫管理のやり方

服の廃棄によるコストは合計値で把握し、判断ミスを防ぎましょう。
日々の在庫や回収率を数字で管理し、定期的に廃棄判断するフロー作りが大切です。どこでなぜ廃棄が増えているかが把握しやすくなり、廃棄量を減らす根本的な打開案へ繋げられます。
即実践できる管理法で、服の廃棄削減を始めましょう。
服を廃棄するときの総コスト
費用は個別の項目ではなく、処理・輸送・保管・労務・資材・機会損失を足した合計による判断がコツです。例えば、輸送費を抑えても保管が長期化すれば全体の負担は増えます。
実務では1箱あたりにまで分解して、今すぐ廃棄する場合、前処理して再販売を狙う場合、回収に出す場合の三つの案を並べ、現金回収までの期間と合計コストのバランスで選びましょう。
廃棄を減らす管理方法
入庫からの経過日数にしきい値を設け、強制的に廃棄を判定する仕組みを作り、判断の先送りを防ぎましょう。回収率や在庫日数は判断材料になるため、可視化できるようにします。
継続した管理と判断で、廃棄になる服の特徴などをつかめ、サイズ配分や発注ロット、補充のタイミングの見直しといった廃棄量を減らす施策を取り入れやすくなります。
まとめ|服の廃棄を減らすために今日からできる取り組み
服の廃棄を最小化する第一歩は、どこで、なぜ廃棄が生まれているかの見直しです。生産や返品設計、検品の抜け、保管環境などから原因を洗い出しましょう。
廃棄か回収か判断に迷ったときは、安全性やブランド保全を優先に、売れる見込みのある服は短期回転で再販売、難しい服はリユース先の実態を確認したうえで資源化や適正廃棄へ進めます。
日々の在庫管理と定期的な判断フローの整備も重要です。廃棄から再販売やリユースへと方向転換するための改善策を見出しやすくなります。
小さな運用改善を積み重ね、ローコストで廃棄を着実に減らしていきましょう。
