ファストファッション労働問題は解決できる?原因と私たちにできること
ファストファッションは、トレンドの服を安く購入できるいっぽうで、深刻な環境・社会問題を引き起こしています。服を作る過程で、大量の水を消費したり二酸化炭素を排出したりと資源の問題が注目されがちですが、深刻な労働問題も起こっているのです。
労働問題というと、私たち消費者には関係なく、企業が解決するべきだと思うかたも多いでしょう。しかし、私たちにもできることがあるのです。
この記事では、ファストファッション労働問題について、原因や対応策をご紹介します。持続可能な世界のために、服を作る人々にも優しい行動を取れるようにしましょう。
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なぜファストファッション労働問題が起こるのか?根本原因とは
ファストファッション労働問題は、製造工場の拠点があるアジアで多く起こっています。劣悪な労働環境で亡くなる人もいるのが現状です。行動を起こす前に、まずは何が原因なのかを知っておきましょう。
ファストファッションの問題点
ファストファッションは、トレンド商品をたくさん売るため、低価格・短納期、大量生産・大量消費を前提としています。全てのコストを抑える必要があるため、環境や労働者への配慮が後回しになりがちです。
特に労働コストを抑えるため、バングラデシュ・インド・ベトナムなどのアジア諸国に生産拠点があります。服の生産に関わる人が安い賃金で働いており、フェアトレードではない点がファストファッション労働問題の特徴です。
安い服の裏側の現状
労働者の賃金が低いのはもちろんのこと、長時間労働や労働環境が悪い点も問題視されています。2013年にはバングラデシュにあるファストファッションの縫製工場が崩壊し、1100人以上の死者を出したのです。
この工場の崩壊原因は、建物の違法な増改築と長時間のミシンの振動だったと報告されています。この事件により、長時間労働や劣悪な労働環境の問題が浮き彫りとなりました。改善しようとする動きもありますが、現在でも家族を養うために長時間労働をして、子供に会えるのは年に1〜2回という状況で働いている人もいるのです。
国・地域によっては、児童労働や強制労働もあります。安い服の裏側では、労働に見合う賃金がもらえない人や劣悪な労働環境で働いている人がいるのです。
労働問題が起こる理由
ファストファッションは低価格を実現するため、労働者の賃金や環境整備への投資が不足しているのが労働問題の原因です。原材料の調達〜製造・販売までの流れで一番削減されやすいのは、賃金だといわれています。
さらに、他国に原材料の調達・製造を頼り、生産〜販売までのサプライチェーンが複雑化し、労働環境の把握が困難なのも原因の1つでしょう。製造を委託している企業側ですら、労働者の働く環境がわからず、長年放置されやすくなっています。
参考:JETRO「縫製工場「ラナプラザ」崩落事故から10年」
参考:fuudee「ウルトラファストファッションの安さの裏側には何がある?環境に優しい選択肢とは」
ファストファッション労働問題の解決のキーワードは「エシカル」
最近、ファストファッションに対する言葉として、サステナブルファッション・エシカルファッションという言葉が聞かれるようになりました。ファストファッション労働問題を解決するには「エシカル」がキーワードです。関連する言葉と区別して行動できるよう、意味を知っておきましょう。
知っておきたい「エシカル」とは
エシカルとは「倫理的な」「道徳的な」意味を持つ言葉です。ファッション業界では、労働者の権利や環境への配慮を重視する言葉として使われています。
安い価格や流行だけを優先するのではなく、どのような生産過程で作られたのかに目を向けるのが重要です。「エシカル」は難しく聞こえるかもしれませんが、実はとてもシンプルな考え方です。
「誰かを犠牲にしないものづくりを応援する」そんな気持ちが、エシカルにつながっていきます。
エシカルファッションの特徴
エシカルな観点から作られ、販売されている衣類はエシカルファッションと言われています。エシカルファッションには次のようなものがあります。
・労働者に適切な賃金が支払われている
・長時間労働や劣悪な労働環境を避けた環境で作られている
・環境に配慮した素材や製造方法を採用している
・原料としてオーガニックコットン・リサイクルポリエステル・植物由来のレザーを使用している服
エシカルファッションに関連する言葉
関連する言葉を覚えておくと、エシカルな行動をとる時に役立ちます。混同しやすい言葉もあるので、以下の3つを覚えておきましょう。
・フェアトレード:生産者に公正な価格を支払う取引の仕組み
・サステナブルファッション:持続可能な素材や製造方法で作られるファッション
・スローファッション:長く愛用できる品質やデザインを重視するファッション
ファストファッション労働問題に取り組んでいる企業・ブランド
すでにファストファッション労働問題に取り組むアパレル企業が出ています。賃金や労働環境を整えている企業の服を購入すると、エシカルファッションへの需要が増えるでしょう。アパレルブランドと具体的な取り組みをご紹介します。
労働者の権利を保護「H&M」
H&Mは世界的なファストファッションブランドですが、「持続可能コミットメント」を設定し、健全な職場・健全なエコシステム・動物福祉について取り組むことを明記しています。
労働問題に関しては、安全な職場環境や危険な暴露がないこと、宿泊住居は職場と別でなければならないと掲げているのです。
フェアトレードを実施「People Tree」
People Treeはイギリスと日本を拠点に、フェアトレードを基盤としたファッションを展開しているブランドです。手作業を重視しており、オーガニックコットンやテンセルなどの天然素材を手織りや手染めをして衣服を作っています。
PeopleTreeは、世界フェアトレード連盟がフェアトレード団体として保証しており、世界中がエシカルでいられるような取り組みを行っているのが特徴です。
労働者の発言を重視「patagonia」
アウトドアアイテムを展開するpatagoniaも、エシカルな取り組みをしているブランドです。patagoniaは、公正労働協会(FLA)の創設メンバーとして加盟しており、アパレル業界が労働環境を改善させるような活動をしてきました。
労働者が自分の権利のために立ち上がり、発言するプログラムを設定しています。フェアトレードを行い、労働者と管理者が話やすい環境を作っているのです。
ファストファッション労働問題を解決に近づける私たちの行動
賃金や労働問題は、企業が解決するべき課題です。しかし、ファストファッション労働問題は消費者が「安いファッション」を求める続けるのも原因の1つです。私たちが購入する衣服が、世界のどこかにいる誰かを苦めないように、できることを知り、取り組んでいきましょう。
「知ること」が第一歩
ファストファッション労働問題を少しでも改善したい時は、まず現状を知るのが大切です。購入しようと思っている衣服がどこで・どのように作られているのか、そのブランドがエシカルな取り組みをしているかを確認しましょう。
またはエシカルな取り組みについてのネット記事を見たり、ドキュメンタリーをみるのもオススメです。YouTubeで「衣服 労働問題」と検索すると、世界的に問題となっている現状を把握できます。
エシカルな選択は完璧じゃなくていい
環境問題や労働問題について考えると、完璧を求めてしまう方もいるでしょう。しかし、1個人では大きくは動けません。完璧な行動をしようとすると、できない部分ばかりが目立って、取り組み自体が嫌になってしまいます。
まずは小さな選択をするのが大切です。購入できる範囲でエシカルなアイテムを買ったり、購入する頻度を減らして物を長く使うだけでも良いでしょう。
エシカル認証マークを見つけよう
エシカルな取り組みをしている企業の物を購入すると、需要が高まります。売り上げが上がると、さらにエシカルな取り組みを加速できるでしょう。どのような製品・アイテムがエシカルなものかは、認証マークをみるとわかります。
・フェアトレード認証:労働者に公正な賃金が支払われている
・GOTS:オーガニック繊維製品の世界的な認証
・B Corp認証:社会的・環境的責任を果たしている企業を証明
このような認証マークがついているブランド・製品に注目してみると、今は購入できなくても確実に未来は変わっていくでしょう。
まとめ|ファストファッション労働問題は「知る」ことが重要
ファストファッション労働問題について、原因や具体的な取り組み、私たちにできる行動をご紹介しました。安い衣服を作るにはコストダウンが必要なので、低賃金・長時間労働など劣悪な労働環境を生み出しているのです。
衣服は環境問題だけではなく、労働や社会問題も引き起こしています。まずは現状や企業の具体的な取り組みを知っておきましょう。
ファストファッション労働問題を解決するには、私たち一人ひとりの選択が重要です。どのような生産過程で作られているのか、そのブランドはエシカルな取り組みをしているのかに注目しましょう。