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モーダルシフトとは何かを簡単に解説!企業が取り組むメリット・デメリットは?

物流の見直しを検討していても、具体的な方法に悩む企業は少なくありません。

 

近年、環境対策の一環として企業の物流体制も見直されるようになりました。その中でも、よりエコな輸送方法として注目されているのがモーダルシフトです。

 

本記事では、モーダルシフトとは何かとメリット・デメリットを解説し、企業の実践例をご紹介します。自社への導入により、環境や労働問題の改善のほか、企業イメージの向上にも貢献します。

 

モーダルシフトとは|意味・背景と今社会で注目される理由

SDGsなど環境保全への関心が高まる中、企業にはカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが求められています。物流業界で注目されるモーダルシフトとは一体どのような取り組みでしょうか。まずは用語の意味をはじめとした基礎知識を解説します。

 

モーダルシフトとは?

 

モーダルシフトとは、貨物を運ぶ方法を環境にやさしい手段に変えることです。具体的には、トラック主体の輸送方法から鉄道や船など環境に優しい輸送方法へのシフトチェンジがあげられます。

 

従来は、工場から納品先まで数百キロの距離をトラックで往復するのが一般的でした。モーダルシフトではトラックの移動は、出荷元から大型輸送インフラへの接続拠点までと、そこから到着地点までに限定されます。移動距離が短縮する分、環境負荷や労働負担の軽減が期待できるのです。

 

なぜ必要?社会的背景と物流業界の課題

 

物流業界は、二酸化炭素排出量の削減と2024年問題への対応が大きな課題です。

 

日本全体の総二酸化炭素排出量のうち、19.2%を運輸部門が占めています。さらに貨物自動車(トラック)は、運輸部門全体の約38%と大きな割合です。トラックより二酸化炭素排出量の少ない別の輸送インフラに切り替えると、80〜90%も二酸化炭素排出量を削減できるといわれています。

 

また2024年問題とは、トラックドライバーの労働時間に上限が設けられた影響で生じる物流業界の諸問題です。ドライバー不足や物流コストの増加等が懸念されています。対策を行わない場合、2030年には現在よりも34%ほど輸送力が不足すると試算されています。

 

参考:国土交通省「モーダルシフトとは」「物流2024年問題の概要と国土交通省の取組紹介」

 

モーダルシフトとは企業価値の向上に貢献!実践するメリット

環境負荷の増大や物流停滞の可能性など課題を抱える物流業界において、モーダルシフトとは実践のメリットが期待できる取り組みです。環境や労働問題といった課題への対応は、結果的に社会や顧客からの信頼に結びつき、企業イメージの向上にもつながります

 

二酸化炭素の排出を削減し環境にやさしい 

 

貨物輸送の手段をトラックから船や鉄道に変えると、大幅に二酸化炭素排出量を抑えられます。トラックに比べて、他の大量輸送手段では二酸化炭素排出量を80〜90%抑えられるとされています。

 

環境保全への意識が高まる中、企業のエコな取り組みに注目が集まる昨今。脱炭素を意識した取り組みは、企業イメージの向上にもつながります。

 

ドライバー不足対策と労働環境改善

 

長距離輸送の見直しにより、ドライバーの拘束時間を短縮し、労働負担の軽減も期待できます。

 

トラックに比べ、大型輸送インフラを活用すれば、一度に多くの荷物を運ぶことができます。トラックでは、大量の荷物の運搬には複数のドライバーが必要です。しかしモーダルシフトにより、ドライバーの数を最低限に抑えつつ、多くの貨物を効率的に輸送できるのです。

 

長距離輸送のコスト削減と業務効率化

 

一度で大量の貨物をまとめて輸送できるため、作業効率が向上します。

 

長距離輸送においては、トラックよりも他の輸送モードの方がコスト削減につながるケースが多く見られます。大量輸送により、燃料費や人件費を大幅にカットできるからです。トラックの場合だと複数台が必要になり、その分コストや作業負荷も増大します。

 

業務効率化は企業の生産性を高め、さらなる成長につながります。

 

 

モーダルシフトとは課題もある?導入前に知っておきたいデメリット

数々のメリットがある反面、モーダルシフトとはいくつかの課題も抱える方法です。企業での導入を進める前に、デメリットを把握しておくと安心です。デメリットをカバーする方法も事前に検討しておきましょう。

 

輸送時間が長くなる

 

鉄道や船での輸送は、トラックの利用よりも輸送時間が長くなる傾向にあります。

 

鉄道や船は運航スケジュールが決まっており、自社のタイミングに合わせての出発が不可能です。船の場合だと、一般的に輸送時間はトラックや鉄道よりも長くなります。関東から関西方面への輸送をみると、船では2日かかるのに対し、トラックは1日で済みます。

 

臨時の対応が難しいため、状況に応じて他の輸送手段も確保しておくなどフレキシブルな対応が必要です。また取引先には、自社の環境保全への取り組みや姿勢を理解しておいてもらうとトラブルを回避しやすくなるでしょう。

 

貨物の積替えが必要になる

 

輸送手段の切り替えには、中継地点での積み替え作業が発生します。出発地点から直接貨物を届けられるトラックよりも手間が必要です。

 

複数回の積み替え作業により、貨物の落下や衝撃による破損のリスクや、温度変化による品質劣化のリスクが高まります。さらに、積み替え作業にかかる人的負担や人件費の増加も。

 

こうした中継作業の効率向上も、物流現場で求められる対応のひとつです。

 

使える範囲や柔軟性が限られる

 

物流に別の手段を組み込むには、貨物の積み替えが可能な地点が自社の配送経路内に存在していなければなりません。積み替え地点が自社からかけ離れている場合だと、導入自体が難しくなります。

 

また長距離輸送ではコスト削減効果が期待できますが、短距離では逆に増大する可能性があります。鉄道や船は、大量の貨物を遠くに運ぶとコストダウンできますが、距離が近いとそのメリットが活かせません。

 

台風や雪など天候による運行スケジュールの変更・休止も懸念事項です。天候の影響で納期が大幅に遅延する可能性があるため、余裕をもったスケジューリングや複数の輸送手段の確保が必要です。

 

モーダルシフトとは企業の実践例でわかる!SDGsの事例を紹介

環境や労働問題への強い思いや理念を抱えた企業では、すでに輸送手段の見直しが進んでいます。ここからは、企業の実践例からモーダルシフトとは何かを紐解いていきましょう。他社の取り組み事例を知ると、自社の物流に合った方法を具体的に考えやすくなります。

 

ヤマト運輸|鉄道輸送の活用でCO₂削減を実現

 

ヤマト運輸では、トラックと他の輸送手段を併用することで二酸化炭素の排出を大幅に削減。およそ70%の削減効果が期待されています。

 

鉄道輸送の拡大に加え、複数の荷主の荷物をまとめて運ぶ「混載輸送」やコンテナ単位の貸し切り輸送により、輸送の効率化にも取り組んでいます。環境と物流効率の両立を目指し、社会貢献活動を積極的に行う企業です。

 

ヤマト運輸「物流効率化による温室効果ガス排出量の削減支援」

 

味の素|いち早くモーダルシフトを導入

 

味の素は、社会の環境保護意識が高まる以前から脱酸素型の物流を推進してきた企業です。

 

鉄道輸送の導入後、東日本大震災を機に輸送手段の分散化に向け、船舶による輸送も開始。さらにトラック輸送の効率化にも取り組んできました。1台のトラックに2つのコンテナを連結する「ダブル連結トラック」を導入し、通常の30%の二酸化炭素削減に成功しました。

 

同社の取り組み率は90%に達し、業界内でも先進的な存在です。

 

参考:味の素株式会社「モーダルシフトってなに?環境負荷を減らしドライバー不足も解消する物流ソリューションとは」

 

ネスレ日本|鉄道への転換で効率アップ

 

ネスレ日本は、食品・飲料業界で初めて鉄道利用による中距離輸送を開始した企業です。

 

2024年に静岡県の工場から大阪方面へ鉄道で運び始め、2025年に入ってからは中国・四国地方にも新しいルートで運ぶようになりました。この取り組みで、1年間の輸送量は前年の約1.6倍に。また1年で約7,000台分のトラックが不要になり、二酸化炭素の排出も約1,100トン減らせる見込みです。

 

参考:PR TIMES「ネスレ日本・JR貨物グループによる中距離帯での定期貨物鉄道輸送取り組み開始から2年目を迎え、輸送量を約1.6倍に拡大」

 

まとめ|モーダルシフトとは社会貢献につながる!導入して企業を成長させよう

 

トラック主体の輸送から鉄道・船での輸送に転換するモーダルシフトとは、二酸化炭素削減だけでなく労働者にも優しい輸送方法です。さらに環境保全や労働環境への配慮は、社会や取引先、顧客から評価されやすく、企業イメージやブランド力の向上に貢献するでしょう。

 

一方で導入に際しては、コストや柔軟性などの課題も伴います。自社の物流体制に応じた慎重な検討が必要です。

 

持続可能な社会と企業の成長を目指すにあたり、長期的な視点で物流を見直し、効率的かつ環境にやさしい体制への転換を検討してみましょう

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